「ジャイアントロボ」の不幸と、そしてお願い

  「ジャイアントロボ」という作品について、
今感じていることを少しだけ書いてみたいと思います。


 そもそも、この作品は名作「鉄人28号」を超える新しいロボット漫画の傑作を!との横山光輝先生の強い意気込みのもとに構想が練られたものだと聞いております。そして、共同製作者として小沢さとる先生もメカや設定に関する様々なアイデアを出されたんだと思っています。

 そのようにして、鉄人の終了した翌年の昭和42年5月から週刊少年サンデーで始まった「ジャイアントロボ」は、高い年齢層を対象とした緊迫感にあふれるスパイ戦に始まり、GR計画を進め世界制覇を図らんとする秘密結社ビッグファイアと、それを阻止せんとする国連特別捜査機構の息詰まる戦いへと展開していき、予想に違わぬ超一級のドラマに仕上がっていました。

 国連情報員F104号・A108号の破壊工作活動、完成途上に頭部が落下し大破炎上するGR1(ジャイアントロボ)、パニックに陥るビッグファイアT国秘密支部、誤って捉えられた日本人観光客・草間大作・・・そして拷問、ビッグファイア幹部達のあせり・苦悩と、息つくヒマを与えないスピード感に溢れた展開とグイグイと惹き付けるスリル満点のストーリー、躍動感に満ちたキレのいいキャラクター群、重厚で兵器としての威圧感一杯のGR1!・・・横山先生のストーリーテイリングの妙と小沢先生の魅力的で迫力のある絵が見事にマッチした素晴らしい共同作品となっておりました。

 私はこの時小学2年生で、少ない小遣いの中、毎週少年サンデー(@60円)を欠かさず買っていたのですが、いつもまず真っ先にこの「ジャイアントロボ」をむさぼるように読んでいました。当時のサンデーには、他にも横山氏「仮面の忍者赤影」、小沢氏「青の6号」、手塚治虫氏「バンパイア」「どろろ」、藤子不二雄氏「パーマン」、赤塚不二夫氏「もーれつア太郎」、久松文雄氏「冒険ガボテン島」、川崎のぼる氏「アニマル1」などなど傑作漫画ばかりでしたが、当時はこれらの作品群が全く眼中に無かったようで(笑)、この「ジャイアントロボ」だけが今でも強烈に記憶に焼き付いています。

 この作品がそのまま続いていたなら、間違いなくロボット漫画史上に残る傑作になっていたことでしょう・・・。しかし残念なことに、横山・小沢両先生を取り巻く環境がそれを許さなかった・・・・。草間大作が突然の秘密基地大爆発により偶然手にする事となった超兵器GR1と、そしてそれを奪回せんとするビッグファイアの総攻撃が始まった頃から絵のタッチが荒れていき、小沢絵の中に横山風の絵が混じるようになり、見た目にも執筆体制が破綻しつつあることがわかるようになっていきます・・・・・。

 そして、迎えた連載第13回目、突然表紙から「小沢さとる」の名前が消え、「横山光輝&光プロ作品」に変更となってしまいます・・。その後も絵は更に乱れ、主人公草間大作は青年から少年へと姿形を変え、ロボット達からも超兵器としての魅力は失せていきました後日聞くところによると、小沢先生が去り、そして急遽後を引き継いだ横山先生も他の連載で手が回らず、そのほとんどを光プロのアシスタント達にまかせっきりにしてしまったという事のようです・・・・。(ただ念のため補足しますと、ストーリー展開自体はそれでもなおスリリングでテンポも良く、第2部後半ちょっと急ぎすぎた感は否めませんが、やっぱり傑作だと思いますが。)

小沢先生が「ジャイアントロボ」の執筆を断念した昭和42年7月時点における両先生の連載状況を振り返ってみますと、

【横山先生連載作品】月産平均P222
仮面の忍者赤影(週刊少年サンデー) P16×4週=P64
コメットさん(週刊マーガレット) P16×4週=P64
魔法使いサリー(月刊りぼん) P24
グランプリ野郎(月刊少年) P40
水滸伝(月刊希望ライフ) P30

【小沢先生連載作品】月産平均P222
ジャイアントロボ(週刊少年サンデー) P16×4週=P64
青の6号(週刊少年サンデー) P16×4週=P64
丹下左膳(週刊少年キング) P16×4週=P64
ハントムX(月刊少年画報) P30

といった感じで、今の漫画と違い1ページ平均8コマ以上と多く、物語の展開も速かった事を考えると、確かに一人の作家がこなしていく量としては尋常ではありません。特に小沢先生は横山先生に比べるとアシスタントやお手伝いの方の数も半分ぐらいだったでしょうから、誰が見ても長く連載を続けられる状況にはなかったと痛感させられます・・・・。また、小沢先生の後を受けて連載を引き継いだ横山先生も、月産300ページ近くになったわけですから限界を遙かに超えていたと推察されます。両先生ともこの作品の人気が高かっただけに、最後まで精一杯努力されたんだと思いますが・・・結果としてこんな最悪の事態になってしまい、さぞや肉体的・精神的なダメージは大きかったかと強く感じます。

そしてさらに、この「ジャイアントロボ」という不幸な作品を境として、両先生ともにヒット作が生まれなくなっていくという・・・言って見ればスランプの時期に突入していったような気が・・・・。両先生にとってこの作品は、お二人の交流断絶をもたらしたばかりか、その後の苦悩の時期等も重なり、強烈な苦い思い出として記憶に残ったんではないでしょうか・・・・考えすぎかもしれませんが(苦笑)。

両先生にとって忘れてしまいたかったであろうこの作品は、TV特撮ドラマ版のヒットなども重なり多くのファンの心に深く深く刻み込まれて行きましたし、この30有余年の間、多くのファンがずっと復刻を待ち続け、両先生や出版社に弛まぬ要望を続けて来ました。そして近年、ダメを押すようにしてOVA版「ジャイアントロボ」がファンの間で大ヒット・・・、何とも皮肉としか言いようがありません・・・・。横山作品のオールキャスト的な色彩が濃いOVAアニメのタイトルが「ジャイアントロボ」であり、また雑誌・単行本などに著者紹介として掲載される横山先生の代表作の中に今でも「ジャイアントロボ」が入って来るということを見るにつけ、本当にこの作品の持つ因縁の深さというものを感じてしまいます。

けれどなお、横山先生は頑として「私が死ぬまで、この作品は絶対に復刻しない。」と明言し、そして小沢先生はこの作品について一切口を閉ざしたまま・・・・。ファンは今でもこの作品の復刻を渇望し続け、関西方面ではこの作品の雑誌コピー本が目の飛び出るような値段で取り引きされている・・・・・、本当にこれほど不幸で悲しい作品は無いと感じております。

最後になりますが、私がこの小文を書いておこうという気持ちになったのは、今から2年前になにげなく見つけた由比さんのウェブ・サイト「横山光輝の世界」に出会ったおかげです。ここで、同じような思いを持つ多くの熱いファンの皆さんと仲間になることができましたし、前記のOVA版をきっかけとして原作GRに興味を持つようになった若い世代の方々ともたくさん知り合いになることができ、そして、今でもさらに新しいファンが日々増え続けていることも知りました。

平成11年にソフトガレージ社から「第2部」だけとは言え、全話復刻されることになったのは本当にうれしい知らせでしたが、これが実現したのも新しいファンの増加による機運の盛り上がりが背景にあったからだと思っています。そしてこの復刻により希望が生まれました。もしかしたら完全復刻も実現するのではないかと。ファンにとっては途中で絵が変わろうがどうしようが、傑作と認められる作品の評価には全く関係のないことです。只々、その絵の変遷も含めて「ジャイアントロボ」という作品の全てをもう一度通して読みたい、そしてもっと深く知りたいだけです・・・。

横山・小沢両先生がこの作品を愛するファンの気持ちを少しでも汲み取ってくれることを、 
いつまでもいつまでも祈り続けております。

【作品初出データ】

第1部」週刊少年サンデー   昭和 42年5月 14 (20)号〜7月 16 (31) 小沢さとる・光プロ

昭和 42年7月 23 (32)号〜9月 17 (38) 横山光輝・光プロ
第2部」週刊少年サンデー 昭和 42年9月 24 (39)号〜 12 10 (50) 横山光輝・光プロ
第3部」週刊少年サンデー 昭和 43年1月 7/14 (2/3)号〜3月3日 (10) 横山光輝・光プロ


【作品Q&A】
★ 何で「ジャイアントロボ」がコミック化されなかったんだろう?されてないよね?見たコトないし・・・。誰か事情 を知ってますか?それはともかく見たいなあ〜。何とか見るコトはできないものでしょうか?情報を下さい。

★ 少年サンデーに連載された原作版GRのうち、小沢先生と共同で執筆された第1部については、連載途中 で小沢先生が降板し、その後を急遽引き継いだ横山先生との関係がしっくりいかなくなったことや、それに伴 う両者間の著作権上の問題と、横山先生自身も自分が亡くなるまで単行本化を許可しないとおっしゃっている ことなどもあり、復刻が非常に困難な状況にあります。したがって、第1部については連載雑誌のバックナン バー(1冊3千円前後)を収集するか、それを保有している濃いファンに見せてもらうしかないのが現状です。
第2部については、平成11年にソフトガレージ社が発行した「横山光輝まんが集」に初めて収録されまし た。これは、現在でも在庫があるかと思いますので(東京の漫画専門店ですと、まだ店頭で販売しているとこ ろも多いです)ご確認ください。第3部については、横山先生が他の週刊連載もあり超多忙だったため、アシス タントが中心となって執筆されたことな どから、第1部同様、横山先生が単行本化を許可していないそうで す。
なお、余談ですが、関西方面を中心に、確認できただけでも3種類のGR海賊本(横山先生の許可のない雑 誌からの複写本)が過去に発行されており、その内の1種類は再販を重ねながら特定の漫画古本屋さんなど で、現在も売られているそうです。ヤフーオークションでも過去に10件程度この海賊本が出品され、高額で取 引きされています・・・。ファンの読みたいという気持ちもわかりますが(私もそうだし)、非常に悲しい状況です ね。

★ な、なんと、棚の雑誌を整理していたら、横山光輝先生の顔写真付きのインタビュー記事が見つかりまし た。その中で、ジャイアントロボの件が語られています。(SPA!1992年5月13日号)
(Q) なぜ、「GR」の単行本は1度も出ないのですか?
(A) あの頃は、サンデーに「GR」と「赤影」の2本、週に30ページ以上描いていた。それで、鉄人のようにじ っくりやれず、いろんな人と描いた。僕と小沢さとるさんと、もう2人で。それで絵が変わってしまった。似て るんだけど、ちょっと違う。それがイヤになって連載もやめた。単行本にしたら、その違いは一目で分かる。 もし出すなら全部描き直しです。それで単行本の許可を出さんのです。出してはマズイ。

★ ある方からのお話だと、小沢先生がGRから手をひいた時に、「今後一切GRに関する権利を放棄する。」と の念書を光プロに渡したそうです。そこまで両先生の関係はこじれていたんですね・・・本当に悲しいです。

★ 「横山光輝まんが集」を出版したソフトガレージの担当者さんのお話しによると、最初の企画では横山まん が集は全2巻で、GRを含む著名な未復刻作品を全話収録するとの意気込みで横山邸に乗り込んだそうで す。けれど交渉は難航し、なんとか了解をもらったのが各作品とも一部分だけの復刻という悲しい内容で、や むなく全1巻に変更したそうです。GR第1部、第3部の復刻は先生の拒絶反応が頑として強く、絶対に無理と おっしゃっておりました・・・。

★ 講談社漫画文庫の「横山光輝時代傑作選」の編集者さんも、横山先生との打合せの際にGRの復刻をそれ となく打診したそうですが、その話題が出たとたんに、もの凄く不機嫌な表情になり、それ以上何も聞けなくな ったそうです・・・。

★ GRの海賊本がたくさん出ているというお話はよく聞きますが、ところで横山先生の許可を受けた正規のGR 原作関係本って全く存在しないのでしょうか?わかりましたらお教えください。

★ 私が確認できた範囲では、次のような関係本が発行されています。いずれも絶版ですが・・・。
(1) 「ジャイアントロボ・スーパーコレクション」アップルBOXクリエート(平成4年発行)。
   内容はGR全扉絵の 復刻と当時学年誌に連載されたGR(光プロ作品)の一部復刻となってます。
(2) 「別冊オックス・ジャイアントロボ」横山光輝クラブ(平成5年発行)。 
   内容は当時小学館コミックスに連載 されたGR(光プロ作品)の完全復刻となってます。